私は進化そのものを研究しているわけではないですが、仕事を進める上で進化を考えないといけないことが多いです。その割にまともに進化をこれまで勉強してきてないので、いろいろ本を読んで知識を増やしたりしています。そんなわけで進化に関わる本をいくつか紹介してみます。
今の時代、進化を勉強しようと思うと少なくとも、
1 分子から入るアプローチ
2 化石から入るアプローチ
が挙げられます。もちろん現生生物の系統関係からのアプローチとか他にもいろいろあるんですが、いずれにしても結局分子の進化(DNA・タンパク質の変化)と、形態・生態の進化(変化)をどうつなげて理解していくのか、ということが問われて続けているのが学問分野としての(分子よりの)進化学なのではないかと思っております。まあ、この手の問題は昔からgenotype-phenotype relationshipsとして捉えられておりました。そして最近になって、いわゆるevo-devo解析・ゲノム解析・遺伝子破壊(改変)実験手法の開発などが発展して、理解が進んだことも多いと思うのですが、ナゾが謎を呼ぶ状況になっている感もあるかと思います。
というわけで、とりあえず分子から入るアプローチの本をいくつか紹介
分子進化学の開祖といえる木村資生先生の本。昔の岩波新書らしく、けっこう難しい数式とか概念が出てきて、難易度高い。わからないところすっ飛ばしていっても、分子進化学の基礎概念みたいなものは理解できるのではないかと思います。最後の方に、優生学っぽい話が出てくるのがアレですが、ご愛嬌といえばご愛嬌。
分子からみた生物進化 DNAが明かす生物の歴史 (ブルーバックス)
- 作者: 宮田隆
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/01/21
- メディア: 新書
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ホモロジーサーチの開祖と言える宮田隆先生の本。修論の副査をしていただいた思ひで。この本も分子進化の基礎概念と、いろいろおもしろいトピックがまとめられている。この本の前バージョン「分子進化学への招待」の印税は(も)すごかったとかなんとか。
分子進化とコンピュータといえば、分子系統樹の解析か、ゲノム解析の話になることが多いのだが、そういうのとは違う方向の組み合わせ方法を、分野外の人にもわかりやすく(?)説明した本。またこんど紹介する「ワンダフルライフ」などで、進化が(特定の方向性を持たない)ランダムプロセスだということが強調されているけど、この本ではそういうランダムプロセスが分子進化の観点からうまく概説されていると思う。お高いけどオススメ。
ちょっと気色が違いますが、ネアンデルタール人ゲノム(化石ゲノム)解析の第一人者ペーボ先生の自叙伝的な本。けっこうゴシップ的な話も散りばめられていて、読み物としておもしろい。ネアンデルタール人の遺伝子配列は(当然)現生人類とよく似ていて、また化石から抽出できるDNA量は少しなので、対象の化石を扱った人のDNAのコンタミ(混入)を防ぐことがいかにシビアなのかを知ることができます。この本はじきに文庫化されそう。
「進化」という言葉がタイトルに入ってたけど、進化(ほぼ)関係なかった。深層学習のところでニューロエボリューションという概念が出てくるのだが、説明を読む限り、ニューロディベロップメントであって、エボリューションじゃないと思った。内容は難しすぎてよくわからなかった(私の知識・知能不足が原因)。