冬来たりなば春とうがらし

これまでに経験した困ったことと、その解決法らしきもののまとめ。あと読んだ本。

平成にあった「昭和の大学」の墓標 9 完結編 実習と挫折

 待っている人いないと思いますが、長らく続けてきたこのシリーズも完結編ということで。前回は(あくまでそれまでと比べたら、ですが)マジメに授業行き始めた3回生時の話を書きました。今回も同じく3回生のときに(たしか)月〜木の午後にあった生物学実習でのできごととそこで味わったしょぼい挫折のことを書いて終わりにします。
 上述のように週4回くらい実習があったのですが、それまでほぼ全く大学に行ってなかったため、毎日学校に行くことだけで大変苦痛で、辛かったのを覚えています。それはさておき、この実習は毎月(各研究室提供の)5テーマくらいから1つを選んで受講するというしくみになっておりまして、自分の興味のある分野を体験できる(そして適性をそれなりに判断できる)のでいいシステムだったと思います。もちろんテーマごとに「難易度」は大きく異なり、前回紹介した「鬼」先生の研究室の実習は毎日午後11時くらいまでつづくとのウワサでしたので、0.1秒で選択するのやめました。一年かけてたしか5−6テーマを受講したと思いますが、そのうちのいくつかでのイベントを記したいと思います。

 

1 嵐山でのニホンザル観察
 もともとサル学に興味があったこともあり、サルの行動観察は実習が始まる前から楽しみにしてました。午前の講義が終わると(あんまり行ってませんでしたが・・・)、バスと電車で嵐山に移動して、嵐山のモンキーパークで観察することになっておりました。ちょうど着く時間くらいにエサやりがあるので、そのときに集まるサルから観察対象のサルを見つけることになっていました。が、たまに遅刻(寝坊)して、着いたらエサやりが終わっててサルの群れがバラけてしまい困ったこともありました。また、交通費をケチるために、四条大宮まで自転車で行ったら、サル観察中にチャリが撤去されており、それを取り返すのにバス代の何倍もかかる、みたいな悲しいできごともあったりしました。
 嵐山のサルは個体識別されており、顔に入れ墨が入っているので私みたいなド素人でもわりと簡単に観察対象のサルを見つけることができました。最初の説明で、若いオスの観察が一番難しく(よく動く、エサ場に来ないこと多い)、年寄のメスが一番簡単(あんまり動かない、エサ場にかならず来る)ということだったので、おばあちゃんザルの一匹を追跡することにしました。それでも目線を合わせると威嚇してきたり(慣れてくると威嚇しなくなる)、じゃれてきた赤ちゃんサルをかまったりするのを見るのはとても楽しかったです。たま〜に木に登ったりして観察が難しくなるのも愛嬌でした。

 

2 神経生物学
 当時は(今も?)、脳・神経がとっても人気があったので、流れに乗って取ってみました。実習ではカエルの大腿から神経線維(筋繊維?)を分離してきて、電極を刺して静止膜電位、刺激を与えて活動電位を見るという非常にbasicかつ教育的な内容でした。が、わたしは膜電位のことを全く知らず、また電気生理学の基礎的知識もなかったので、何をしてるのか全くついていけず、優秀な受講者が電極を刺していって電位が発生したときに「おお〜」とか言っている横で内心「???」となっていたのでした。同じようについていけてない学生がもうひとりいることに気づいたので、そいつと仲良くなれたのがいい思い出です。

 

3 野外実習
 京都の北の方の山で、植物と動物の生態を観察するというテーマも取りました。私はなんとなく動物の生態学(行動学)に興味があったのですが、その実習を受けて、動物の生態を理解するためにはその動物のエサとなる植物(多くの動物は植物を食べるので)の分布を知らないといけないことに気づいたのでした。私は植物の種類とかを全く知らず(今もですが)、かといってその時から勉強を始めるのもおっくうだったので、生態学はキビシイなと早々に諦めたのでした。さらにその実習では、二人一組で観察することになっており、パートナーは同じサークルの同級生でした。その同級生は手足がめちゃ長く、私が3歩かかるところを2歩でススっと移動するので、肉体的にはオレには厳しい、とか思いました。
 時は流れ、その同級生はプロの生態学者として某大学の教員になっており、その同級生からの依頼で先日その大学で特別講義をすることになったのはなんとも塞翁が馬なできごとでした。

 

4 イルカビデオ
 生態学のもう一つのテーマは、イルカの生態をずっと観察したビデオ(時代ですねw)を何本か渡されて、ビデオの中で排泄(ウンコ)する時刻をノートに記していく、というものでした。ビデオは家で見るわけですが、まあ学生実習ですので、毎日そこそこ見れば十分終わる程度の長さのビデオでした。が、家にビデオを持ち帰っても当然(?)まったく見なくなるわけで、結局最終日の前日にほぼ徹夜で何時間もイルカの排泄を見続けることになり、だいぶヘロヘロになりました(毎日コツコツ見ておけば問題なかったのですけど・・・。 で、最終日にまとめたデータを担当の先生に提出するときに不遜にも「ビデオが長くて、全部見るの大変でした」とのたまったら、その先生から「終わらんかったら、見たところまででよかったのに」と言われて脱力したのを覚えています。

 

 まあこんな感じで、極小の意欲と努力で実習を受けて、その時の印象から研究室決めて卒業研究したわけですから、牧歌的な時代でした。

ー完ー